近年、イタチやハクビシンによる被害が日本各地で増加しており、特に住宅地での糞尿被害や農作物への影響が深刻化しています。
これらの動物はもともと山間部や田畑の周辺に生息していましたが、近年では市街地や住宅地にも頻繁に現れるようになりました。
イタチやハクビシンの被害が増えた背景には、環境や生態系の変化、都市部の構造の変化など、複数の要因が影響しています。
ここでは、イタチやハクビシンの被害が増加した原因や、その背景にある環境変化について解説します。

1. 山間部の開発や都市化の進行による生息地の減少

イタチやハクビシンが本来生息していた山間部や農村部が、都市開発や道路整備、宅地化によって大きく変わり、生息場所が減少したことが大きな原因のひとつです。
山間部の開発によって、森林伐採や土地の造成が進んだことで、これらの動物が生活するための生息環境が失われています。

• 生息地の減少
  山林が減少することで、イタチやハクビシンは食べ物や巣を作る場所を求めて人間の居住エリアに近づくようになっています。
  特にハクビシンは樹上で生活する傾向が強く、森林伐採によって樹木が減ると、身を隠す場所が失われるため、民家やビルなどに隠れ場所を求めるようになりました。
• 都市部への移動
  山間部で生息地を失ったハクビシンやイタチは、都市部や郊外に移動し、廃墟や駐車場、倉庫、住宅の屋根裏などで生活し始めています。
  都市部は食べ物が豊富で、安全な隠れ家も見つかりやすいため、山間部よりも生活しやすい環境を提供しています。
  このため、近年では山間部から離れた都市部でも、これらの動物の目撃例が増え、被害が増加しています。

2. 食料確保のための市街地への進出

都市や住宅地には人間が出すゴミが豊富にあり、イタチやハクビシンにとっては容易に食べ物を確保できる環境です。
生ごみや食べ残しなどを容易に手に入れることができるため、自然の食料源が少なくなった今、これらの動物が住宅地に出没する理由のひとつとなっています。

• 都市環境での食料の豊富さ
  都市部や郊外にはゴミ捨て場や飲食店の周辺など、イタチやハクビシンにとって魅力的な食料源が多く存在します。
  これらの動物は雑食性であり、果物や昆虫、ネズミ、小鳥、ゴミなど幅広いものを食べることができるため、都市部での生活も十分可能です。
• 農作物被害の増加
  都市部だけでなく、農村部の農作物被害も増加しています。
  ハクビシンは果物や野菜を好むため、畑や果樹園を荒らすことが多く、トウモロコシやブドウ、梨、ミカンなどが被害に遭いやすいです。
  近年では小規模農家だけでなく、大規模農園でも被害が報告されており、農家にとって深刻な問題となっています。
  イタチも農作物や家禽（ニワトリなど）を襲うことがあり、養鶏場などでの被害が問題となっています。

3. 温暖化と気候変動による生態系の変化

温暖化や気候変動によって生態系が変化し、イタチやハクビシンの活動範囲や繁殖に影響を与えていることも、被害増加の一因です。
気温の上昇は、これらの動物がより活動しやすくなるため、都市部でも活動的になる傾向が強まっています。

• 冬眠期間の短縮
  温暖化により冬の気温が高くなり、冬眠が短縮されることが多くなっています。
  そのため、イタチやハクビシンの活動期間が増え、被害が年間を通じて起こりやすくなっています。
  特に冬の間は人間の注意が薄れがちなため、住宅内への侵入が増える要因ともなっています。
• 繁殖期の増加
  温暖な気候はイタチやハクビシンの繁殖を助長し、個体数の増加を招いています。
  通常、これらの動物は1年に1～2回の繁殖期を持ちますが、温暖化によってエサが豊富に得られると繁殖期が増え、個体数が急激に増える可能性があります。
  そのため、都市部での被害も年々拡大し、問題が深刻化しています。

4. 建物の構造がもたらす影響と都市環境の適応

現代の住宅やビルの構造は、イタチやハクビシンにとって巣を作りやすい環境を提供しています。
特に、空調設備の配管や排水口、屋根裏など、これらの動物が潜り込める隙間が多いため、住み着かれるリスクが高まっています。

• 建物構造の複雑化
  現代の住宅やビルには、配管や通気口など多くの隙間があり、こうした空間がイタチやハクビシンにとっては格好の住処となります。
  特に、屋根裏や天井裏の隙間は巣を作るのに最適な場所であり、一度巣を作られると追い出すのが困難です。
  さらに、建物の構造が複雑化したことにより、駆除も難しくなっているのが現状です。
• 都市環境への適応力
  ハクビシンやイタチは、人間の生活環境にもすぐに適応する能力を持っており、都市の騒音や人間の存在に対する警戒心が薄くなっています。
  これは特に若い個体に顕著であり、住宅地や商業施設周辺にも頻繁に出没するようになっています。
  適応力が高いため、駆除しても再び戻ってくるケースが多く、住民にとって頭痛の種となっています。

5. 駆除の難しさと法的規制

イタチやハクビシンは「鳥獣保護法」によって保護されているため、許可なく駆除することができません。
専門的な資格が必要であり、一般人が自己流で駆除することは法的に制限されています。

• 許可が必要な駆除
  駆除や捕獲を行うには、都道府県の許可を得る必要があり、資格を持つ専門業者が適切な手段で行わなければなりません。
  違法駆除は罰金や懲役刑の対象となるため、一般の人が駆除を試みることは非常にリスクが高いです。
• 再発防止の難しさ
  駆除後も、イタチやハクビシンが再び戻ってくるケースが多く見られます。
  侵入経路を完全に封鎖するためには建物全体の点検が必要であり、一般の人が完全に対策するのは難しいのが現実です。
  また、駆除が完了しても、他の個体が新たに住み着くこともあるため、完全な再発防止が難しい状況です。

まとめ

イタチやハクビシンの被害が近年増加している背景には、山間部の開発による生息地の減少、都市部での食料の確保、温暖化による繁殖の増加、建物構造がもたらす侵入経路の多さなど、さまざまな要因が絡んでいます。
さらに、駆除や再発防止には法的な制限もあるため、個人での対策には限界があり、専門業者への依頼が不可欠です。

イタチやハクビシンの被害を防ぐためには、自治体や専門業者と連携しながら、侵入経路の封鎖や環境整備を徹底することが重要です。
今後も都市環境の変化や気候変動が続く中、こうした野生動物との共生についての理解を深め、適切な対策を講じることが求められます。